自己実現の手助け
設計とは何か?
そう聞かれると、私なら、「施主の自己実現をお手伝いすること」と、答えます。
心理学者のユングは自分の家づくりについて、自己実現と重ねて考えています。
ユングは人の成長プロセスを「個性化の過程」ととらえました。
ボーリンゲンにある別荘は、ユングが何年もかけて手作りしたもので、自分の心の動きに合わせて改築したり増築したりしているので、この建物は、ユングが思索に耽った場所であると同時に、彼の個性化(自己実現)のシンボルでもあるのです。庭には彼の彫った石などが残っています。
人は雨や風、暑さや寒さから身を守るために、棲みかを造ってきました。
洋服も同じ理由から身にまとってきたのでしょう。
洋服が身を守る機能からシンボルになって、ファッションになってきたように、家は住むという機能だけではなくシンボルや自己表現の手段ともなりました。
盲者が杖の先の感触を自分の身体の一部として感じるように、たま車の運転やパソコンの操作が自分の身体の一部になるように、家もまた、身体化していきます。
きれいに掃除された部屋はすがすがしいと感じ、汚れた部屋は不快に感じます。
心や感情と空間は結びついています。
曼荼羅が平面的な心の表現だとすれば、家や空間は立体的な心の表現となりうるものです。
屋根は守りと覆いです。
背にする壁は安心です。
窓は開かれた世界です。
床はアース(地球とのつながり)です。
色彩は感情です。
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