基礎断熱あれこれ
北海道の家は最近では基礎断熱、外断熱が主流となりました。
昔の家は北海道でも基礎に通気口を開け、床下に外気を入れて換気する仕様となっていました。
それは、建築基準法にも、その頃の住宅金融公庫の仕様書でも、そうすることになっていたからです。
その通気口には蓋が付いていて、上にスライドして鋳鉄の蓋が収納できて、開閉できるようになっています。夏は換気を良くするために開けて、冬は冷気が入らないように、閉めるというのが床下換気口の使い方です。
その床下換気口を雪が降る前に閉め忘れてしまうケースがあります。豪雪地帯の場合、それでも雪が床下換気口をふさいでくれるので、冷気を遮断してくれるのですが、豪雪地帯でも、まれに雪が少ない年など、床下換気口が露出して、冷気が直接入り込み、床下の水道配管が凍結することあります。
今年も、そんなことで凍結した例が3件ありました。
全て、床下換気口が開いていた結果、凍結したものです。
そのような床下換気口設置が当たり前だった時代の家を少しでも温かくしようと、断熱改修する場合があります。
その場合には注意が必要です。
基礎断熱をして、床下換気口をふさいでしまうケースがありますが、もともと床下を開放し、湿気がこもらないようにしていた床下の換気が閉ざされ、しかも断熱材にくるまれて、温かくなった場合、木材を腐らせる腐朽菌が繁殖するケースが多く見られます。
初めから基礎断熱をしている今の家のコンセプトと違うコンセプトで建っている建物に、表面的に何かを付加することで、それまでのコンセプトが崩されてしまうのです。
改修工事の注意点はまさにそこにあります。
異種のもの同士を組み合わせたり、接させることで、何が起こるかを十分に検討する必要があるのです。
床下換気口をつけることを前提にした家では床下が土のまま、良くても防湿シート程度を敷いた状態になっています。
それでは地面からの湿気がどんどんたまります。
湿度が高く、温度が高いとなると、木のセルロースを餌にする腐朽菌が大繁殖し、セルロースを食われた木はスカスカになって強度を失います。
断熱改修をして、3年程で床が落ちてしまうという例があります。
私がその事例を見たときは床と巾木の間が3cmほどすきまが開き、床が傾いていました。
その傾いた床をはがして張り直し、床下の換気できるよう床にガラリをつけ、換気扇で強制的に換気しました。
しかし、1年でほかの床が落ち始めました。
一度棲みついてしまった腐朽菌は後から換気した程度では絶滅しません。どんどん広がっていき、とめどがなくなります。
床を全部はがし、除菌することも検討しましたが、結局はその建物は使えないものとなりました。
せっかく、住み心地を少しでも快適にしようと行った断熱改修が、建物の寿命を極端に縮めてしまう結果になったのです。
さて、基礎断熱ですが、非常に怖い部分があるということにご注意いただきたいと思います。
今の家の、新しいコンセプトだから大丈夫と言い切れるでしょうか?
まずは湿気を床下に入れない措置が十分に取られているか?
ではどのように換気する措置がされているか?
その二つを十分に検討しなくてはなりません。
方法はいくつもあるはずです。
しかし、一見正しく思える方法でも、意外に矛盾していることがあります。
建物にとって一番大切なのは基礎と土台です。
しっかりした地盤にしっかりとした基礎をつくることがまず第一です。
そのうえで、木材を、とりわけ土台を腐らせない措置が十分なされていなければ、木造の建物の寿命は延びません。
基礎断熱で外気をシャットアウトしました。それでは床下の換気ができないので、床にガラリを付けました。
半分正解です。
少なくとも、密閉状態ではないので、水分はいくらかでも室内に発散できるでしょう。
しかし、床下の木材はほとんどの場合防腐剤が塗られていたり、防腐処理された木材が使われていることに留意してください。つまり、室内に放出される水蒸気は防腐剤で汚染されているかもしれないのです。
断熱性能を上げるように基準はどんどんグレードアップしていきますが、床下換気に対しての仕様は示されません。
自分で考えなければならないということを忘れてはいけません。
床下に外から配管を引き、床のガラリの下に補助の電気暖房機を置き、温めた空気を室内に入れるという方法をとっているところもあります。
しかし、通気量は先ほどの例より多くなり、室内を冷やさない工夫はされていますが、先ほどの例と同様に防腐剤で汚染された空気が室内に侵入する可能性があります。
OMソーラーの出始めたころ、同じ問題が起こりました。
屋根で温めた空気を床下のコンクリートに蓄熱し、床のガラリから温められた空気を室内に入れるというOMソーラはパッシブシステムとして画期的な方法でしたが、シックハウスの問題が生じてしまったのです。それは床下の防腐剤の汚染された空気が室内に侵入したことで起こりました。
私もOMソーラを参考に、吹き抜けの上部の空気を1階の床下に配管で送り、床のガラリから温まった空気を室内に送るということをやります。
その場合は、防腐土台や防腐剤は使用しません。
ひのき材を使います。ひのきは抗菌性が強く、腐れにくいので防腐処理を不要としています。
しかもひのきのニオイなら、室内に入っても癒されます。
これが私が床下から室内に空気を入れる方法です。
また、それと逆の方法も取ります。
床下に防腐剤が使われている場合は、室内の空気を床下に入れ、床下から外気に排気します。
床下に外気を入れて、温めてから室内に放出することと比べてみてください。
せっかく基礎断熱して冷気をシャットアウトしたのに、そこにどうして冷たい外気を入れなければならないのでしょうか?
基礎断熱の意味がなくなってしまうのではないでしょうか?
それを温めて室内に入れるのでは、エネルギー的に省エネになっているのでしょうか?
室内の空気を床下に入れ、外に排気するという方法なら、床下に室内の温かい空気が入り、床が冷えません。
これを24時間換気として行います。
24時間換気は法的にしなければならないことになっています。
通常の24時間換気は天井から温かい空気を外に排気してしまいます。
せっかく高気密高断熱しても、温かい空気を放出してしまうのなら、省エネ効果を24時間換気が奪ってしまうことになります。
それなら、床下を経由して24時間換気を排気すれば、床の冷えた空気であること、それでも室内の空気なので温かいので床下を温めたあと、排気されることなど、熱効率が良くなります。
しかも、床下の汚染された空気はそのまま外気に流れ、室内の空気を汚しません。
基礎断熱、24時間換気、床下の換気、それらは法律的にも、仕様的にも別ものとして記載されているのですが、実際の家ではそれそれが密接に絡みあり、相乗効果が生み出されたり、効果を相殺させてしまったりする要素なのです。
基準を満たせばいいとか、個別に考えるのではなく、トータルに考えていかなければなりません。
それが設計者の責任です。
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