建物の寿命について
木造の住宅の寿命はどれくらいなのだろう?
「建物は何年もつか」という、早稲田大学 小松幸夫氏のレポートを見てみよう。
サイクル年数
日本30年、米国103年、英国141年
という数字がある。
ヨーロッパの建物は基本的に石づくりがベースにある。堅固でこわれない家をつくる意識が強い。
日本は木造が主流である。
歴史的に残っている古い木造建築で言えば、世界にも引けを取らない実績がある。
昔の茅葺屋根は15~20年で葺き替えをする。
畳は、年末にはがして乾燥させ、いよいよ悪くなれば敷きかえる。
障子や襖は紙でできているので、破れれば張り替える。
このように、日本の家は部分、部分を交換し、新陳代謝させることで長くもたせてきた歴史がある。
アメリカの住宅は住まい手が自らメンテナンスし、ペンキを塗り替えながらいつもきれいな状態を保とうとする。
きれいな状態を維持していれば、高く売れる。
しかし、今の日本の住宅では屋根の葺き替えも、壁の塗り替えも、床の張り替えもあまり想定されているとは言えない。
その結果、30年ほどのサイクルで建て替えることになる。
これではローンが払い終わるか終わらないかのうちに寿命が尽きることを意味していて、住宅が社会資本としてストックされない。
メンテナンスされず、建物の価値が下がり、高く売るために建物を良くするという発想が不足している。
今は空き家問題が主要な問題になっている。
子どもが家を継がない。子どもは家から出て、別の家を建てる。
家が1世代だけのものになってしまっているうえに、使わなくなった家を売ろうとする発想がなく、空き家になり、老朽化する。
先ほどの資料に、新築費用1663万円、補修費1039万円、解体費120万円という数字が出ていた。これが30年間の費用だ。資料の光熱費は除いて考えると、トータル2822万円。30年で割ると、1年間の費用が94万円。月、7万8千円の計算になる。
税金を除いた額である。金利も考えていない。
30年しか持たないとすれば、賃貸の方が安いかもしれない。
ここで大切なのは30年間に1039万円の修繕費が必要だということを考慮せずに家を建ててはいけないということだ。
屋根の塗装替え、壁の塗り替え、設備機器の交換等、維持するにはそれなりにお金がかかる。
マンションでも問題になるのは修繕費である。
家を建てる場合は建築費だけではなく、何年そこで暮らすのか、暮らさなくなった場合は売れるのか、維持費にどれくらい費用が掛かり、ライフサイクルコストがいくらになるのかの指標をもつことである。
同じ建設費であれば、使う年数が長ければ、費用対効果が上がる。
多少コストがアップしても長くもたせるためのコストであれば、費用対効果が上がる方が得だ。
しかし、60年長持ちさせるとして、そこに将来誰が住むのか、途中で売るのか、売れるのか、その見極めも必要である。
そう考えていくと、中途半端な家なら、あまり永くもたせても価値がない。
しっかりとした構造で、本物の自然素材を使って経年変化が味になるような建物なら、将来も価値を維持し、住まなくなっても売れるだろう。
どちらにベクトルを向けるかをはじめに考えるべきなのだ。
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