雨仕舞い

雨仕舞いとは、雨水が室内に侵入しないような、納まり、納め方です。

基本的に雨が入らないようにする機能は屋根が受け持っています。

壁からの侵入というのも、無くはありませんが、壁は即座に垂直に水が流れるため、よほどの暴風雨や、海岸沿いの強風地域でない限りは、大きな問題になることは少ないと思います。

それに対して、屋根や屋上、バルコニーなどからの雨水の侵入は十分にあり得る部分となります。


そこで、雨が室内に入らないための基本的な考え方について述べてみましょう。

まずは、水を溜めない。これが一番基本的なことです。

屋上から漏水しているという現場を見に行くと、ドレーンに枯れ葉やゴミが溜まり、水の流れをせき止め、屋上に水が溜まっていることがあります。

ドレーンを掃除して、水の溜まりを解消してあげると、漏水は発生しなくなります。

陸屋根、屋上のある建物、無落雪の家など、時々ドレーンを点検して、掃除をしましょう。

特に雪が降る前に、枯れ葉を取り除いておかないと、融雪で水が溜まり、雨漏れの原因となります。


水を溜めないためには、水を流す必要があります。水の流れは水勾配で決まります。排水に向けて、あるいは外部に、水を流すための傾きです。

傾きが急であるほど、水は早く流れます。ですが水の勾配を決めるには、材料の性質や室内の空間など、様々な要因があります。


私は基本的な考え方として、ドレーンは詰まるかもしれない。

きちんと管理してくれないかもしれない。

そう考えることにしています。

最悪の状況を想定するのです。


建築家は、管理されることを前提に建物を設計してはいけないと思います。

「それは管理責任だ」というのでは、建築家の責任逃れに過ぎません。


もちろん、管理してもらうに越したことはありません。管理フリーな建物などはできないからです。

それでも、管理されなかった場合、最悪の状況をイメージして設計する必要があるのです。


私は、歩行用のルーフデッキをつくるような場合、その水勾配は緩くせざるを得なくなるのですが、では、その緩い勾配で水をどこに流すか、どこを流末にするかを考えます。

その流末は水が溜まってしまう可能性があります。

だから、その部分を建物の外に出します。万が一、水が溜まって漏水したとしても、室内の上でなく、その外であれば、外部に水が落ちるだけで済みます。

そして、水が溜まる想定で、その部分を一段下げて、室内側まで水が溜まらないようにします。

さらに、仮に水が溜まっても、オーバーフローを設けて、一定の量まで水が溜まったら、外に流れ出るようにしておきます。

室内側まで水が溜まらないようにするのです。

バルコニーも同様です。

このようにしておけば、二重、三重に室内への漏水を避ける納まりになっているので、ほぼ室内への雨漏りはありえなくなります。

最悪管理がされていなくても大丈夫です。

左側に一段下がった排水溝があります。室内から外側に出ています。左側にさらに壁があります。

樋は隠れていますが、外部に排水溝が出ています。

デザイン的に、雨処理部分は見えません。


私の設計する建物は、そこが基本です。

いくらデザインに凝った素晴らしい建物でも、雨が漏る建物は私の中では論外だと思うからです。


これは別の解決法をとっています。樋に水を集めていますが、最悪、それが詰まれば、バルコニーの外にあるれ出て、室内には侵入しません。

外には逆勾配になっていて、通常は雨だれが落ちません。

ドレーンがつまるなど、最悪の状態の場合は、外にあふれ出るようになっています。






Ken Pro  建築プロデュース

建築家は魔法使いです。それまでこの世に存在しなかったものが、創造力で物質化します。 その創造力は、クライアントの要求を物語にできるかどうかからはじまります。 ただの箱をつくるか、物語をつくるか、 それはクライアント自身が決めてください。 ただの箱をつくるなら、このサイトは必要ありません。 物語を創りたいクライアントのために、建築プロデュースはヒント、あるいは仮説をご用意しました。

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